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ZEH(ゼッチ)とは?基準・メリット・デメリットと補助金まで完全ガイド

ZEH(ゼッチ)は断熱・省エネ・創エネを組み合わせ、年間のエネルギー消費量を実質ゼロ以下に抑える住宅です。

新築だけでなく既存住宅のリフォームやマンションでも実現でき、補助金や住宅ローン控除での優遇も用意されています。

本記事ではZEHの基準、4分類、メリット・デメリット、リフォームでの実現性、マンションのZEH-M、補助金、2027年から始まるGX ZEHを2026年最新情報でまとめました。

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ZEHとは|定義とエネルギー収支の考え方

「ZEH(ゼッチ)とは?」の図解。住宅の「断熱(熱の出入りを抑える)」「省エネ(高効率設備で消費を減らす)」「創エネ(エネルギーを自宅でつくる)」の3つを組み合わせ、年間の一次エネルギー収支ゼロ以下を目指す住まいであることを解説している。

ZEHとは、住宅の断熱・省エネ・創エネを組み合わせて年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下に抑える住宅です。

経済産業省は2030年までに新築住宅の平均でZEH水準の省エネ性能を確保する方針を掲げています。

補助金、税制、住宅ローン優遇など複数の支援策で普及を後押ししている状況です。

リノベーションを検討する方にとって、ZEHは光熱費・住み心地・将来の資産価値を同時に考える上で外せないキーワードになっています。

参考:[資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について - 省エネ住宅 | 家庭向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト

ZEHの読み方は「ゼッチ」|英語表記とその意味

ZEHの読み方は「ゼッチ」です。 英語表記は「Net Zero Energy House」で、その頭文字を取った略称になります。

「Net Zero Energy」は、住宅で消費するエネルギーと自宅で生み出すエネルギーの差し引きをゼロにするという意味です。

国の制度名にも「ゼッチ」の呼び方が採用されており、補助金やZEHビルダー制度など公的な場面で広く使われています。

ZEHの定義|エネルギー収支ゼロを目指す住宅

ZEHの定義は、年間の一次エネルギー消費量を住宅自身で生み出すエネルギーでまかない、収支をおおむねゼロ以下にする住宅です。

一次エネルギーとは、暖房・冷房・換気・給湯・照明など暮らしに必要な設備で使うエネルギーを指します。

ZEHの考え方は3段階で組み立てられています。 まず断熱を高めて熱の損失を抑え、次に高効率設備で消費量そのものを減らし、最後に太陽光発電で不足分を補います。

築年数が古く、冬の寒さや光熱費の高さに悩む住まいほど、ZEHの考え方が根本的な解決策になります。

表面的なリフォームではなく、家全体のエネルギーの流れを整える発想が、長く住み続けるための土台になります。

ZEHに必須の3つの要素|断熱・省エネ・創エネ

標準的なZEHを実現するには、断熱・省エネ・創エネの3つの要素を組み合わせる必要があります。

地域や住宅条件によっては創エネを必須としない特例区分もありますが、ベースとなる考え方は3要素の組み合わせです。

どれか1つだけでは収支ゼロには届きません。3要素をバランスよく満たして初めてZEHと認められます。

築30年クラスの住まいでも、断熱改修と高効率設備への入れ替え、太陽光発電の導入を順序立てて進めれば、体感温度と光熱費の悩みが同時に解消されます。

断熱|窓・壁・屋根で熱の出入りを抑える

ZEHで最初に手を入れるべきは断熱です。どれだけ高効率な設備を入れても、家の外皮から熱が逃げていれば消費エネルギーは減りません。

断熱を後回しにすると、エアコンも太陽光も穴の空いたバケツに水を注ぐ状態になります。

熱の出入りが大きい順に並べると、窓、壁、屋根、床の順になります。 窓の断熱には内窓設置や複層ガラスへの交換が有効です。

壁には高性能断熱材の充填や付加断熱、屋根・天井には吹き込み断熱や断熱パネルの追加が定番の手法です。

国は地域区分ごとにUA値(外皮平均熱貫流率)の基準を定めており、ZEHではこの強化外皮基準を満たすことが求められます。

断熱改修の具体的な進め方や費用感は、以下の記事で詳しく解説しています。

https://furureno.jp/magazine/renovation-insulation

省エネ|高効率な給湯器・エアコン・照明で消費を減らす

家庭のエネルギー消費は給湯、暖房、冷房、家電が大半を占めます。

ZEHでは、これらの設備を高効率タイプに置き換え、基準となる一次エネルギー消費量から20%以上の削減を達成する必要があります。

給湯の選択肢は主に3つです。 ヒートポンプで空気の熱を使うエコキュート、ガスの排熱を再利用するエコジョーズ、その両方を組み合わせたハイブリッド給湯器となります。

オール電化を目指すならエコキュート、ガス併用の使い勝手を残すならエコジョーズが基本の選び方になります。

エアコンはAPF(通年エネルギー消費効率)の数値が大きいほど省エネ性能が高い機種です。 照明はLEDへの切り替えで消費電力を減らせます。

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入すれば、家中のエネルギー使用状況がスマホで確認でき、無駄な消費を見つけやすくなります。

創エネ|太陽光発電とエネファームで自宅でエネルギーを生む

創エネとは、住宅自身でエネルギーを生み出す設備の総称です。 ZEHで使われる創エネ設備は、太陽光発電とエネファームの2つが中心となります。

太陽光発電は屋根にパネルを設置し、太陽光を電気に変えて使う設備です。

ZEH認定に必要な容量は家族構成や使用エネルギー量によりますが、4〜5kW程度が標準的な目安となります。

南向きで勾配のある屋根が特に発電効率が高く、東西の屋根や陸屋根でも設置は可能ですが発電量は下がります。

余った電気はFIT(固定価格買取制度)で売電できますが、買取単価は年々下がっており、自家消費を中心に設計するケースが増えています。

蓄電池を併設すると、昼間に発電した電気を夜間に使え、停電時の非常電源としても機能します。

エネファームは都市ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電する家庭用燃料電池で、発電時の排熱で給湯もまかなえる設備です。

太陽光とエネファームを併用するW発電を選ぶと、創エネ量はさらに増えます。

初期費用は太陽光が4〜5kWの設置で120〜150万円程度、蓄電池が容量4〜12kWhで80〜220万円、エネファームは100万円前後が目安となります。

ZEHの認定基準|一次エネルギー消費量で評価される

ZEHの認定は一次エネルギー消費量を基準に評価されます。

具体的な要件は3段階で構成されています。

地域区分で定められたUA値の強化外皮基準を満たし、設備の省エネで基準一次エネルギー消費量から20%以上削減、再生可能エネルギーの導入で合計100%以上の削減が条件となります。

性能を客観的に示す手段としてBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)による評価・証明があります。

第三者機関が住宅の省エネ性能を星の数で表示するため、自分の家がどのレベルにあるかが一目で分かります。数字で性能が見えるのはZEHの大きな利点です。

費用対効果を理屈で確かめたい方にとっても、感覚的な「省エネ住宅」ではなく、削減率やUA値といった客観的な数値で判断できる安心感があります。

ZEHの地域区分|お住まいの地域でUA値の基準が変わる

ZEHのUA値基準は、住宅が建つ地域の気候によって8区分に分かれています。寒い地域ほど断熱性能の基準が厳しくなる仕組みです。

地域区分

主な地域

UA値の基準(ZEH水準=断熱等級5)

1〜2地域

北海道全域

0.40W/㎡K以下

3地域

青森・岩手・秋田・長野・新潟の一部

0.50W/㎡K以下

4地域

宮城・山形・福島・栃木の一部

0.60W/㎡K以下

5〜7地域

関東・東海・近畿・中国・四国・九州の大半

0.60W/㎡K以下

8地域

沖縄

UA値基準なし(η値で評価)

上記はZEH水準(断熱等級5)の基準値です。一般的な省エネ基準(断熱等級4)はこれより緩く、6地域で0.87W/㎡K以下となっています。ZEHはより高い断熱性能が求められる位置づけです。

主要都市の地域区分は、札幌が2地域、仙台が4地域、東京・名古屋・大阪・福岡が6地域、那覇が8地域です。

自分の住まいがどの地域区分にあたるかは、国土交通省が公開する「地域区分新旧表(PDF)」で市区町村単位まで確認できます。

地域区分は補助金の金額にも影響します。新築ZEH支援事業では1〜3地域(寒冷地)と4〜8地域(温暖地)で補助額が分かれており、ZEH+改修事業でも1〜4地域と5〜8地域で上限額が変わります。

ご自身の地域区分を最初に押さえておくと、補助金の概算もイメージしやすくなります。

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ZEHの種類|Nearly ZEH・ZEH+・ZEH Orientedの違い

「ZEHの4分類」の図解。立地や性能によって分かれる「ZEH」「Nearly ZEH」「ZEH Oriented」「ZEH+」それぞれの創エネ要件や一次エネルギー消費量削減率の違いを比較。あわせてZEH水準住宅との違いや、2027年スタートの新基準「GX ZEH」の要件(断熱等級6以上、省エネ率35%以上強化など)について解説している。

ZEHは性能や立地条件によって4つのタイプに分かれます。

創エネを必須とする「ZEH」「ZEH+」、再エネ量を緩和した「Nearly ZEH」、創エネ設備を必須としない「ZEH Oriented」の4種類となります。

ZEHの4分類|ZEH・Nearly ZEH・ZEH Oriented・ZEH+

ZEHの4分類は、達成すべき省エネ・創エネのレベルで区別されます。

基本となる「ZEH」は、強化外皮基準を満たし、設備の省エネで一次エネルギー消費量を20%以上削減、さらに再エネ導入で合計100%以上の削減を達成する住宅です。

日射条件や敷地に余裕がある戸建てなら、まずこの基準を目指すのが標準的な選択になります。

「ZEH+」は令和7年度から定義が改定され、省エネ率は30%以上、外皮の断熱等性能等級6以上が必須になりました。

さらに、自家消費拡大の選択要件(昼間沸き上げ機能付き給湯機・蓄電池・EV充放電設備など)のうち1つ以上を採用する必要があります。

「Nearly ZEH」は寒冷地や日射条件が厳しい地域向けの区分で、再エネによる削減率が75%以上100%未満でも認められます。

「ZEH Oriented」は、敷地面積85㎡未満の都市部狭小地や、垂直積雪量100cm以上の多雪地域を対象とした特例区分です。

太陽光発電などの創エネ設備は不要となる代わりに、外皮性能と省エネで一次エネルギー消費量を20%以上削減する必要があります。平屋建ては対象外となるため注意が必要です。

ZEHとZEH水準住宅は何が違うか

ZEHとZEH水準住宅の違いは、創エネ設備が必須かどうかにあります。

ZEH水準住宅とは、ZEHと同等の断熱性能と省エネ性能を備えるものの、太陽光発電などの再エネ設備の設置を求めない住宅です。

住宅ローン控除や住宅省エネキャンペーンなどの制度では、ZEH水準を基準としたグレードが設定されており、創エネ設備がなくても税制優遇や補助金の対象となります。

創エネ投資を急がず、まずは断熱と設備の省エネで光熱費を下げたい方には、ZEH水準が現実的な入口となります。

将来の売却や二世帯化を視野に入れるなら、後から太陽光を追加できる余地を残した設計が有効です。

最初からZEHを完成形として作るか、段階的にZEH水準からアップグレードするか、家族の資金計画に合わせた選択肢があります。

地域や住宅条件で選べるタイプが変わる

ZEHのどのタイプを目指せるかは、家の構造・方位・周辺環境によって決まります。

まず断熱改修の難易度を見極めます。 木造軸組か鉄筋コンクリート造か、窓面積はどれくらいか、外壁を触れるかによって、達成できる外皮性能の上限が変わります。

次に創エネの余地を確認します。 南面の屋根面積、屋根の勾配、周辺建物の影、マンションなら管理規約の制限を踏まえ、太陽光で何kWまで載せられるかを試算します。

日射条件が厳しい場所ではNearly ZEHやZEH Orientedが現実的な目標となります。

最後に家計とライフプランの優先順位で決めます。

光熱費削減を最大化したいならZEHやZEH+、初期費用を抑えつつ快適性を底上げしたいならZEH水準、共用部の制約が大きいマンションならZEH Orientedが選び方の基本となります。

2027年から始まるGX ZEH|新基準への移行

2027年4月から、現行ZEHを上回る「GX ZEH(新ZEH)」が適用される方針が示されています。 従来のZEH基準が引き上げられた新しい区分です。

主な変更点は3つあります。 外皮の断熱等性能等級が5以上から6以上に引き上げられ、省エネ率も20%以上から35%以上に強化される見込みです。

戸建てでは蓄電池(初期実効容量5kWh以上)と高度エネルギーマネジメント(HEMS)の導入も必須となる方向で検討されています。

2027年以降に新築を計画する場合は、現行ZEHではなくGX ZEHを前提に性能を組み立てるのが基本となります。

リフォームでも、長く住み続ける前提なら新基準を意識した断熱・設備の選択が判断軸になります。

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ZEHのメリット|光熱費・快適性・防災面

戸建てフルリノベーション後。温かみのあるナラ無垢フローリングが広がる明るいLDK。左手には間接照明が美しく照らす白いレンガ調のアクセント壁と、フロートタイプの造作テレビボードを配置。ブラウンのレザーソファの奥には対面キッチンが見える、ZEH仕様の快適な空間。アルティザン建築工房のリノベーション事例。

ZEHのメリットは光熱費の削減、家中の温度差解消、停電時の備え、資産価値の維持です。

高断熱は遮音性能も底上げするため、外の騒音や生活音が気になりにくくなる副次効果もあります。

電気代が高騰しても光熱費の影響を受けにくい

ZEHは電気代の値上がりに強い住宅です。

断熱と省エネ設備で消費量そのものを抑え、太陽光発電の自家消費で買電量を減らすため、電力単価が上がっても家計への影響が小さくなります。

実際の費用対効果は20年程度のキャッシュフローで見ると分かりやすくなります。

初期投資は数百万円規模となりますが、毎月の光熱費削減と売電収入、補助金を合わせて回収していく構造となります。

築年数の古い住宅で、冬の寒さや高い光熱費に悩んでいる方ほどZEH化の効果は大きく出ます。

家計の負担を月単位で減らすだけでなく、電気代高騰リスクへの備えにも機能する住宅となります。

夏も冬も家中の温度差が少なく、廊下や脱衣所も寒くない

ZEHでは家中の温度差が小さくなり、冬場の廊下や脱衣所の冷え込みが改善されます。 高断熱の家は外気の影響を受けにくく、エアコン1台でも家全体の温度が安定します。

温度差が小さくなると、冬場のヒートショックのリスクが下がります。

入浴中の事故は冬の寒い脱衣所と熱い浴室の温度差が引き金になることが多く、消費者庁も注意喚起を出しています。

高齢の親や将来の自分の暮らしを考えるなら、家全体の温度を均一に保てる住まいは大きな安心材料となります。

結露が減ると掃除の手間が減り、ペットや小さな子どもがいる家庭でも衛生的な空気環境が保てます。 住む人の健康と日々の家事負担、両方に効いてくる効果です。

停電時も太陽光と蓄電池があれば、冷蔵庫や照明が使える

太陽光発電と蓄電池を組み合わせたZEHは、停電時の備えになります。 昼間は太陽光で発電した電気を直接使い、夜間や曇天時は蓄電池に貯めた電気を使う運用となります。

停電が発生しても、冷蔵庫の食材を守り、スマホやWi-Fiルーターを充電し、最低限の照明を確保できます。

ここ数年は災害時の長時間停電が各地で発生しており、自宅で電源を確保できる安心感は年々大きくなっています。

電気自動車を所有していれば、V2H(Vehicle to Home)機器を介して車のバッテリーから家に給電できます。

ZEH+の選択要件として認められるEV充放電設備を備えておくと、災害時の備蓄電力がさらに厚くなります。

家族に高齢者や介護が必要な方がいる世帯では、停電時でも電動ベッドの作動や医療機関の情報を得るためのスマホの充電やWi-Fi環境の維持という意味で、大きな安心材料になります。

※なお、生命維持に関わる在宅医療機器の電源としては、天候や容量による供給不安定のリスクがあるため、蓄電池を主電源として頼ることはできません。

各医療機器メーカーが指定する予備バッテリー等の準備が原則となります。

中古市場での評価が落ちにくく、住宅ローンの金利優遇も受けられる

ZEHは中古市場での評価が落ちにくい住宅です。

BELS認証などで省エネ性能が客観的に示せるため、買い手にとって光熱費が読める家、住み心地が担保された家として価値が伝わります。

住宅ローンの金利優遇も用意されています。 フラット35Sの金利Aプランや、民間銀行のZEH対応住宅ローン商品では、一定期間の金利が引き下げられる優遇があります。

2026年以降の住宅ローン控除は、ZEH水準を満たすかどうかで大きな差が出る制度に変わる見込みです。

ZEH水準省エネ住宅の借入限度額は3,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円)です。

一方、省エネ性能が基準に満たない一般住宅は、2026年以降に新築で建てる場合、住宅ローン控除の対象外となります。

ZEH水準を満たすかどうかが、税制面で受けられる優遇の有無を決める分岐点となる見込みです。

長く住み続ける前提でも、将来子どもに引き継ぐ、売却して住み替えるといった選択肢が残ります。

費用対効果を理屈で確かめたい方にとっても、資産面の根拠で家族を説得できる材料となります。

参考:国土交通省「住宅ローン減税」]

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ZEHのデメリットと後悔しがちなポイント

ZEHには初期費用の高さ、将来の交換費用、設置場所の制約という3つのデメリットがあります。 事前に押さえておけば、見積もりや設計段階で対策を講じましょう。

建築費が一般住宅より数百万円高くなる

ZEHは一般住宅に比べて建築費が数百万円高くなります。

高断熱仕様の外皮、高効率設備、太陽光発電、蓄電池をまとめて導入するためで、新築・リフォームのいずれでも初期費用は跳ね上がります。

回収年数は前提条件によって大きく変わります。

電気代の上昇率、売電単価、補助金の活用額、太陽光の発電量を変数として置き、20年・30年スパンのキャッシュフローで判断するのが基本となります。

初期負担を抑える選択肢としてPPA(電力販売契約)があります。

太陽光パネルを事業者が無償設置し、発電した電気を住人が買い取る仕組みで、初期費用ゼロで創エネを導入できます。

ただし契約期間中はパネルが事業者の所有物となるため、屋根改修や売却時の取り扱いを契約前に確認する必要があります。

太陽光・蓄電池は将来の交換費用がかかる

太陽光・蓄電池は将来の交換費用が発生します。

太陽光パネル本体の寿命は20〜30年程度ですが、電気を変換するパワーコンディショナーは10〜15年で交換が必要となり、20〜30万円程度の費用がかかります。

蓄電池の寿命は10〜15年程度です。本体価格は技術進化で年々下がっていますが、交換時には設置工事費も含めて100万円規模の出費を見込む必要があります。

保証期間や保守契約の内容、故障時の対応スピードはメーカーや販売会社によって差が大きく、契約前の確認が欠かせません。

屋根の点検や清掃も継続的に必要となります。パネル表面の汚れや鳥害、周辺樹木の影による発電低下を防ぐため、5年に1度程度の点検を計画に入れておくと安心です。

ZEHの維持管理を不安に感じる方は、初期契約時に長期保守プランを含めて見積もりを取るのが基本となります。

屋根の形や向きで太陽光を設置できないことがある

太陽光発電は屋根の形や向きによっては設置できません。

発電量を確保するには南面に十分な屋根面積が必要で、北向きの屋根、急勾配の屋根、複雑な形状の屋根では計画通りの発電量が出ません。

屋根の上にトップライト、煙突、ドーマー窓などがある場合、パネル配置の自由度はさらに下がります。

意匠を優先した屋根形状を選んだ結果、太陽光が載せられず計画していたZEHに届かないケースもあります。

設計段階で屋根の方位・勾配・面積・干渉物を整理し、太陽光の搭載可能量から逆算するのが確実な進め方となります。

世界観や外観デザインを妥協したくない方は、ZEH+ではなくZEH Orientedや Nearly ZEHでの達成を視野に入れましょう。

創エネ量を抑える代わりに断熱・省エネで一次エネルギー消費を減らす設計で、意匠と性能を両立することも可能です。

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ZEHはリフォームで実現できるか

既存住宅でもリフォームでZEH基準は達成できます。ただし新築よりは難易度が高く、住宅の条件によって到達できるレベルが変わります。

既存住宅でもZEH基準は達成できる

既存住宅でもZEH基準の達成は可能です。国も既存住宅のZEH化を後押ししており、改修向けの補助金制度が整備されています。

ただし、新築よりリフォームの方が難易度は高くなります。

既存の躯体や間取りに合わせた改修となるため、断熱材を入れられる場所が限定され、屋根の構造によっては太陽光の搭載量に上限が出ます。

特に築40年以上の住宅では、基礎・耐震・断熱を一体で見直す大規模リノベーションが必要となるケースが多くあります。

達成しやすいのは、築浅で断熱改修が一部済んでおり、南面に十分な屋根面積を持つ戸建てです。

逆に達成が難しいのは、築古、北向き屋根、狭小地、マンション専有部のみの改修となります。

フルZEHが難しい場合でも、Nearly ZEHやZEH水準など段階的な目標を立てれば、光熱費と住み心地は改善します。

リフォームでZEHにする3つのステップ

ZEHリフォームには断熱改修、省エネ設備、創エネ導入というステップがあります。 順序を守ることで、無駄な投資が避けられます。

第1ステップは断熱改修です。 窓・外壁・屋根・床の断熱性能を上げ、家全体の熱負荷を下げます。

熱負荷を先に下げておけば、後で導入するエアコンや給湯器の容量を抑えられ、設備費用と運用コストの両方が下がります。

第2ステップは省エネ設備への切り替えです。 高効率給湯器、高効率エアコン、LED照明、HEMSの導入を進めます。

断熱改修で減った熱負荷に合わせて設備容量を選べば、過剰投資が避けられます。

第3ステップが太陽光発電と蓄電池の設置です。

断熱と省エネで消費エネルギーを最小化してから創エネを乗せれば、必要な太陽光容量も小さく済み、初期投資が抑えられます。

順序を逆にして先に太陽光を載せると、消費エネルギーを減らさないまま大容量パネルを設置することになり、過剰投資となります。

戸建てとマンションで取れる手段が違う

戸建てとマンションでは、ZEH化で取れる手段が大きく異なります。

戸建ては外壁・屋根・床・窓のすべてに手を入れられます。 太陽光発電も自由に設置でき、目指せる目標は通常のZEHやZEH+です。

敷地と屋根の条件が揃えば、フルZEHでの達成が現実的な選択となります。

マンションは制約が多くなります。専有部のみの改修が原則で、共用部にあたる外壁・屋根は管理組合の合意が必要となります。

太陽光は屋上設置で管理組合の合意が必須となり、個別のベランダ設置は原則認められません。

このため、マンションで目指せるのはZEH-MやZEH Orientedが現実的なラインとなります。

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マンションのZEH化はどこまで可能か

マンションのZEH化は、専有部の改修と管理組合との合意形成の両輪で進める形になります。 戸建てとは制約の種類が大きく異なるため、最初に知っておくべき基準が「ZEH-M」です。

ZEH-Mとは|マンション版ZEHの基準

ZEH-Mは集合住宅向けに設計されたZEHの基準です。 建物全体で一次エネルギー収支の最適化を目指すもので、共用部の省エネや創エネも評価対象に含まれます。

ZEH-Mには4段階のグレードがあります。

建物全体で100%以上の削減を達成する「ZEH-M」、75%以上の「Nearly ZEH-M」、50%以上の「ZEH-M Ready」、20%以上の「ZEH-M Oriented」です。

高層マンションほど屋根面積に対する戸数が多く、創エネ量に限界があるため、低層ほど高グレードを目指しやすい構造となっています。

戸建てを前提とした情報だけを見ていると、マンションでZEHは無理だと早合点しがちです。

ZEH-Mという別の基準を理解しておくと、自分のマンションでも達成可能なグレードが見えてきます。

専有部でできる改修と、できない改修

マンションの専有部では、窓と内装、設備の改修ができます。

特に効果が大きいのは窓の改修です。内窓設置や、既存の窓枠に新しい窓をかぶせるカバー工法での交換が選べます。

窓の断熱性能を上げると体感温度が大きく変わり、結露の発生も抑えられます。

エアコンや給湯器、照明、換気設備の入れ替えも専有部の判断で進められます。 ただし給湯器の方式変更(ガスから電気など)は、共用配管や電気容量の制約を確認する必要があります。

専有部でできないのは、玄関扉、外壁、屋根、共用配管の改修です。玄関扉は外側から見える共用部扱いとなり、管理組合の許可がなければ交換できません。

壁内断熱の追加も、構造壁の場合は管理規約で制限されることが多く、施工前に管理組合への確認が必須となります。

太陽光設置には管理組合の合意が必須

マンションへの太陽光設置には管理組合の合意が必要です。屋上やバルコニーは共用部扱いとなるため、個人の判断だけで設置を進められません。

合意形成では確認すべき項目がいくつかあります。

荷重に対する建物の耐性、防水層への影響、外観・景観の変化、長期修繕計画との整合、設置・撤去費用の負担です。

特に築年数の進んだマンションでは、屋上防水の更新時期と設置タイミングを合わせる調整が必要となります。

系統連系(電力会社との接続)や電気室周りの工事スペースも事前確認が欠かせません。

個別住戸での設置が難しい場合、まずは管理組合主導で共用部の照明LED化や高効率給湯器への切り替えから始め、段階的にZEH-Mに近づける現実的なルートがあります。

ZEHで使える補助金の種類と要件

ZEHには新築戸建、集合住宅、既存住宅改修の3つの区分で補助金が用意されています。 制度ごとに対象要件、金額、申請時期が異なるため、事前の整理が欠かせません。

ZEHで使える主な補助金

ZEHで使える主な補助金は、新築戸建、集合住宅、既存住宅改修の3区分で展開されています。

新築戸建向けには「ZEH支援事業」があり、ZEH・ZEH+・Nearly ZEHの取得に対して定額の補助が出ます。

集合住宅向けには「集合住宅のZEH-M化等支援事業」があり、ZEH-M・Nearly ZEH-M・ZEH-M Ready・ZEH-M Orientedのグレードごとに補助上限が設定されています。

既存住宅向けには「既存住宅のZEH化改修事業」があり、リフォームでZEH基準を達成する案件が対象となります。

改修水準に応じて最大250万〜400万円規模の大型補助が設定されており、新築向け補助金と並ぶ手厚い支援が用意されています。

これらの国の補助金に加えて、自治体独自の上乗せ補助も用意されています。

対象要件、補助額、公募スケジュールは毎年更新されるため、最新情報の確認が必須となります。

申請にはZEHビルダー登録業者の関与が必要

ZEH補助金の申請には、登録ZEHビルダーまたはZEHプランナーの関与が原則必要です。

ZEHビルダーとは、国が定めた基準を満たすZEH対応の工務店・住宅会社で、戸建て住宅を中心に対応します。

ZEHプランナーは設計事務所や集合住宅事業者向けの登録区分です。 登録業者でなければ補助金申請が通らないため、依頼先の選定が補助金活用の前提となります。

特に補助金申請後は設計変更が原則不可となるため、最初の打ち合わせ段階で要件を固め切る体制がある会社を選ぶ必要があります。

補助金は併用できるものとできないものがある

ZEH関連の補助金には、併用できる組み合わせと、できない組み合わせがあります。

国の主要補助金は「同一工事に対しての二重取り」が原則禁止となっています。 一方、国の補助金と自治体の補助金は、多くのケースで併用が可能です。

参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ「ZEH Web

ZEHを正しく理解して住まい選びに活かす

ZEHは断熱・省エネ・創エネの3要素を組み合わせ、年間のエネルギー収支を実質ゼロに近づける住宅です。光熱費削減、温度差の解消、停電時の備え、資産価値の維持という4つの効果が同時に得られます。

ZEHには新築のフルZEHから、Nearly ZEH、ZEH Oriented、ZEH水準まで段階的な選択肢があります。

家の立地、屋根条件、予算、家族のライフプランに合わせて、過不足ないグレードを選ぶのが基本の戦略となります。

既存住宅でもリフォームでZEH基準への到達が可能で、マンションでもZEH-Mという別基準で省エネ化を進められます。

補助金制度は新築・集合・改修の3区分で整備されており、自治体の上乗せ補助も活用できます。

申請には登録ZEHビルダー・プランナーの関与が必要となるため、依頼先選びがZEH成功の鍵となります。

光熱費・住み心地・資産価値の3軸で住まいを考えるなら、ZEHは外せないテーマです。

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記事を書いた人
開原 崇友(かいはら たかとも)

開原 崇友(かいはら たかとも)

建築系ベンチャーにて、組織づくりや新規事業立ち上げに従事。 また、建築会社やスタートアップ企業の事業戦略・人事コンサルタントとして、さまざまな企業の支援にも。 長きに渡る建築業界での経験から、建築プラットフォームを構想。フルリノ!を立ち上げる。

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