日本の空き家は900万戸を超え、過去最高を更新し続けています。(総務省統計局「住宅・土地統計調査」)。
しかし「空き家問題」と聞いても、実際に空き家を所有・相続している当事者がどんな悩みを抱えているのか、その実態は意外と知られていません。
私たち株式会社フルリノは、実家・空き家を保有または相続する1,000人を対象に意識調査を実施しました。
その結果、想像以上に深刻な「空き家を動けない実態」が浮き彫りになりました。
- 【理想と現実のギャップ】売りたい59.5%、しかし放置せざるを得ない23.1%
- 【危機感と知識のギャップ】税金6倍の「特定空家」を6割が知らない
- 【当事者と家族のギャップ】5人に1人は家族と一度も話せていない
理想は「売却」と答えた人が59.5%を占める一方で、現実には「放置せざるを得ない」と答えた人が23.1%にのぼっています。家族と一度も将来について話せていない人も20.0%でした。
本記事では、調査から見えた空き家問題の本質を紐解きます。
そのうえで、売却・賃貸・解体・建替え・リノベーションを含めた「活用」の選択肢を、後悔しない判断基準とともに解説します。
実家や空き家のことで頭の片隅にモヤモヤを抱えている読者にとって、次の一歩を整理する手がかりになるはずです。
調査概要|実家・空き家オーナー1,000人本音調査の全体像
本調査は、実家や空き家をすでに所有している、あるいは相続が見込まれる読者がどのような課題を抱えているかを定量的に明らかにする目的で実施しました。
調査名は「実家や空き家の扱いに悩む方の『本音』調査」です。
対象は実家・空き家を保有または相続する20代から60代以上の男女で、有効回答数は1,000名に達しました。
調査時期は2026年4月、方法はインターネット調査で、株式会社フルリノが実施しました。
回答者の属性としては、年代は30代と40代が中心、対象物件との関係は「実家(親が居住中)」が約6割と最多、建物種類は戸建てが大半を占めました。


以降の章では、設問ごとに見えてきた当事者のリアルな悩みと、活用に向けた判断材料を順に整理していきます。
1,000人調査でわかった、空き家問題の3つの構造的ギャップ
調査結果を俯瞰すると、空き家問題が解決しない背景には、当事者が直面する3つの構造的なギャップが存在することが見えてきました。
1つ目は、理想と現実のギャップです。
2つ目は、危機感と知識のギャップです。
そして3つ目が、当事者と家族のあいだに横たわる対話のギャップになります。
それぞれのギャップは独立して存在するのではなく、互いに絡み合いながら「動けない状況」を生み出していました。
ここからは各ギャップについて、調査データを交えながら順に掘り下げていきます。
ギャップ①:理想と現実のギャップ|売りたいのに、売れない
「将来の出口はどう考えていますか?」と尋ねたところ、「売却」と答えた人は59.5%にのぼり、過半数を大きく超える結果になりました。
ところが、現実的に予想する出口を聞くと、売却と答えた人は42.5%まで減ります。
代わりに浮上してきたのが「放置せざるを得ない」という回答で、理想では一切選ばれなかったこの選択肢が、現実では23.1%を占めました。

理想と現実が一致しなかった人は51.4%にのぼり、半数以上が望まない出口に向かいつつある実態が明らかになっています。
さらに踏み込むと、理想で売却を望んだ595人のうち150人、割合にして25.2%が、現実には放置を予測していました。
「売りたいけれど、売れない」と本人が予感している層が、市場には数多く潜在しているわけです。
この数字は、空き家問題が単なる管理の問題ではなく、出口戦略そのものが詰まっていることを物語っています。
ギャップ②:危機感と知識のギャップ|「税金6倍」を6割が知らない
管理が行き届かない空き家を行政が「特定空家」に指定すると、固定資産税の住宅用地特例が外れて実質6倍の負担になり得ます。
国土交通省の空家等対策の推進に関する特別措置法でも、この制度が定められています。
※「特定空家等」または「管理不全空家等」に指定されたうえで、市区町村から勧告を受けた場合、住宅用地特例の適用対象から除外される可能性があります。
小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されているため、この特例が外れることで、土地部分の固定資産税負担が大きく増える場合があります。
ところが今回の調査では、この制度を「全く知らない」と答えた人が59.0%にのぼりました。
「聞いたことはある」レベルが37.4%で、「詳しく知っている」と答えた人はわずか3.6%にとどまります。

物件までの移動時間が30分以内のオーナーでは、66.7%が制度を知りませんでした。
距離が近くても遠くても、制度の情報は当事者に届いていません。
放置を続ける裏側には、税負担の急増や行政指導、最悪の場合は強制解体といったリスクへの理解不足があります。
「あなたの実家、知らないうちに固定資産税が6倍になっているかもしれない」という事実は、まず最初に知っておくべき情報です。
ギャップ③:当事者と家族のギャップ|5人に1人は一度も話せていない
家族や共有者と今後について話した合計時間を聞いたところ、「0時間」、つまり一度も話せていないと答えた人が20.0%にのぼりました。
「1時間未満」を含めると52.2%が実質的に未対話のままで、半数以上が将来について家族と踏み込んだ話をできていません。

所有者や共有者の意向を聞いても、「何も考えていない」が34.4%でトップ、「不明」が20.8%と続き、話し合いの場すら持てていない状況がうかがえます。
自由記述では、活用を提案した際に家族から言われた拒絶のフレーズが多く寄せられました。
「お父さんが元気なうちは、家をいじらないで」「まだ売る時期じゃない、もう少し待てば値上がりするかも」「じゃああなたが全部やって」など、対話そのものをブロックする言葉が並びます。
論点は「家を売るか否か」よりも、「親の生前から将来の家を考えること自体」が縁起でもないとして遮断される心理にあります。
「親孝行のリノベ」「終活としてのリノベ」といった対話のきっかけ作りが、最初の一歩を踏み出す鍵になります。
当事者のリアルな声|なぜ動けないのか
数字の裏側には、回答者一人ひとりの揺れる本音があります。
調査では、踏み切れない理由、物件管理の悩み、そして放置によって積み重なるストレスについて、自由記述も含めて多面的に尋ねました。
ここから見えてきたのは、「動けない」状態は怠惰ではなく、情報・人間関係・心理的負荷が複雑に絡み合った結果だという事実です。
以下のテーマごとに、当事者の声を順番に紐解いていきます。
「何からしていいか分からない」が動けない理由トップ
活用や処分に踏み切れない理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「何からしていいか不明」で51.5%を占めました。
2位は「費用」で37.8%、3位は「親族の意見不一致」で27.6%、4位は「荷物」で24.7%、5位は「関係者の反対」で7.4%でした。

注目すべきは、「費用」よりも「何からしていいか不明」が上位に来た点になります。
つまり、お金の問題よりも、情報や手順の不足こそが最大の壁だと当事者は感じています。
実家・空き家の話は、相続・税制・登記・建築・不動産流通など複数の専門分野が絡みます。
そのうえ、ライフイベントとしては数十年に一度しか向き合わないため、ゼロから調べ直すコストが大きく、結果として動き出せないわけです。
ここに対する処方箋は、全体像を整理してくれる第三者の存在を早めに見つけることに尽きます。
物件管理で困っていることTOP3|老朽化・荷物・草木
物件の管理で実際に困っていること、不安に感じていることを複数選択で尋ねた結果、「老朽化」が54.7%でトップに立ちました。
次いで「荷物が多くて片付かない」が50.1%、「草木・害虫」が37.0%、「防犯・空き巣」が23.8%と続きます。

老朽化を築年数別に見ると、築41年以上の物件で「老朽化が不安」と答えた割合が約7割にまで急増しました。
築40年が、不安が顕在化するひとつの分岐点になっています。
荷物の問題も深刻で、現状の家の中の物量について「家全体に物が多い、どこから手をつけていいか分からない状態」と答えた人が29.6%にのぼりました。
回答者の3割近くが、片付けの最初の一歩すら踏み出せていません。
- 老朽化:建物そのものの状態を専門的に判断する必要がある
- 荷物の問題:家族内での合意形成が欠かせない
- 草木・防犯:近隣との関係に直接影響する
それぞれ性質の異なる悩みが同時並行で進むため、優先順位を決めて一つずつ着手することが解決への近道になります。
「強いストレス」を抱える人42.0%、相続空き家では57.6%
放置や未解決であることへのストレスを5段階で尋ねたところ、「強い」と答えた人が32.8%、「非常に強い」が9.2%で、合計42.0%が強いストレスを訴えました。
対象物件別に見ると、ストレスの強さには大きな差があります。

「実家(親が居住中)」では34.3%にとどまる一方、「実家(現在は空き家)」では53.4%、「相続した空き家」では57.6%にまで跳ね上がりました。
親が住んでいるあいだは問題が顕在化しないものの、空き家化や相続を契機にストレスが急上昇する構図が見えます。
維持費の負担者別に見ると、「兄弟で分担」が62.3%で最も高く、「兄弟が負担」が59.0%、「自分が負担」が55.1%でした。
費用に当事者として関わる立場ほど、ストレスが鋭くなっています。
ストレスの本質は「お金が出ているかどうか」ではなく、「自分が当事者として向き合わざるを得ないかどうか」にあります。
家族のあいだで役割分担と費用負担を見える化することが、ストレス軽減の第一歩になります。
今一番モヤモヤしている本音|自由記述から
自由記述で「今一番モヤモヤしている正直な本音」を尋ねたところ、数字だけでは見えない心理的負担が次々と寄せられました。
代表的な声を紹介します。
「不動産業界はとにかく悪徳な人が多いと聞き、いい人を見つけづらいというのが一番のモヤモヤです」という業界不信。
「親との話し合いが進まず行動に移せていない点にもどかしさを感じています」という対話の停滞。
「自分が住んでる訳でもない、自分が所有者な訳でもない家のことが今後自分に襲いかかってくるストレス」という当事者性への重圧。
「兄弟で意見が分かれているところ」という家族内の温度差。
これらの声に共通しているのは、解決策が分からないのではなく、「誰に相談すれば中立的な答えが返ってくるか」が見えていないことです。
業者の言いなりにもなりたくない、家族の感情も傷つけたくない、でも放置するわけにもいかない。
このモヤモヤを解きほぐすには、まず立場の異なる複数の専門家に話を聞き、自分のケースに合った選択肢を比較する作業が欠かせません。
フルリノの考察|空き家問題の本質は「活用の選択肢を比較できていないこと」
調査結果全体を俯瞰すると、空き家問題の本質が見えてきます。
それは「動けない」のではなく、「比較できていない」のです。
選択肢を並べて検討した経験がない方が多数を占め、欲しい情報も具体的かつ比較可能なものに集中していました。
フルリノからのコメント
実家・空き家の出口は、売却・賃貸・解体・建替え・リノベーションなど、建物の状態や立地、家族の意向によってさまざまです。
今回の調査では、多くの方が選択肢を十分に整理できないまま、売却・維持・放置のあいだで迷っている実態が見えてきました。
フルリノでは、リノベーション事例や専門家の知見を通じて、住まいの未来を考えるための選択肢を見える化していきたいと考えています。
ここからは、フルリノ視点で見えた3つの示唆を順に掘り下げます。
建替えvsリノベの比較検討経験「ない」が79.2%
「建替え」と「リノベーション」の比較検討経験を尋ねたところ、「ある」と答えた人はわずか20.8%にとどまりました。
残りの79.2%は、出口の選択肢を比べたことすらありませんでした。

一方で、判断基準を尋ねた設問(n=666)では、「予算」が74.2%で突出していました。
次いで「思い出」10.1%、「固定資産税」9.8%、「耐震・断熱」6.0%と続きます。

予算が判断基準のトップに立つこと自体は自然です。
しかし、これは「予算で選びたかった」のではなく、「他の比較材料が手元にないから予算で決めるしかない」という消極的選択である可能性が高いと読み取れます。
費用は重要な要素ですが、それだけで決めると、10年後20年後に「もっと別の選択肢を検討すべきだった」と後悔するリスクが残ります。
判断材料を増やすことが、納得のいく結論への近道になります。
欲しい情報は「相場・業者比較・成功事例」|具体的かつ比較可能な情報へのニーズ
「どんな情報があれば一歩踏み出せるか」の設問の自由記述を分析したところ、登場頻度の高い言葉は具体的かつ比較可能な情報に集中していました。
「相場」が29.1%、「売却まわり」が23.0%、「業者比較」が20.5%、「費用」が19.4%、「成功事例」が18.5%でした。
抽象的な解説や一般論ではなく、数字と実例が求められています。
自由記述には次のような声も寄せられました。
「同じような状況の人がどう解決したかという成功事例があると一歩踏み出しやすい」
「業者比較してから家族へ相談を持ち掛けたい」
これらの声からは、「自分のケースに当てはめられる材料」を読者が切実に求めていることが伝わってきます。
横並びで比較できるシミュレーションや、地域・築年数・予算で絞り込める事例ライブラリへのニーズは強いです。
記事や情報サイトを選ぶ際には、抽象論ではなく具体例の多さで判断するのが賢明な使い方になります。
ネットで調べてもわからなかったこと|出口の解像度の低さが浮き彫り
「ネットで調べていて結局わからなかったこと」を自由記述で尋ねた結果、登場頻度の高い言葉は「売却」17.8%、「費用」11.3%、「業者」9.3%、「相場」8.4%、「解体」7.8%、「相続」7.2%でした。
具体的な疑問として、次のような声が寄せられています。
「リノベーションと売却のどちらが結果的に損をしないのか、長期的な視点でのメリット・デメリットが分かりにくい」
「自分の実家のような築年数や立地でも本当に売れるのか、リノベした方が得なのか、解体した方がよいのかが結局よく分からない」
「特定空家や管理不全空家、相続登記義務化などの専門用語の意味が分かりづらい」
「総額で比較した情報が見つからない、工事費や解体費は書いてあっても、固定資産税や維持費、売却後の手残りまで含めた比較が見えない」
検索しても答えにたどり着けない理由は、情報が選択肢ごとに分断されているからです。
総額比較や、自分のケースに当てはめた判断材料を提供できる情報源を見つけることが、出口の解像度を上げる第一歩になります。
空き家活用の5つの選択肢|売却・賃貸・解体・建替え・リノベーションを比較

空き家を活用する選択肢は、大きく分けて5つあります。
調査で「比較検討経験ゼロが79.2%」と判明した反省を踏まえ、ここでは横並びで5つを並列に整理します。
それぞれのメリット・デメリット・向いているケースを順に見たうえで、最後に費用や期間、向き不向きをまとめた早見表を提示します。
リノベーションだけでなく、売却・賃貸・解体・建替えも含めて検討することが、後悔を避ける近道になります。
選択肢① 売却|手放して資産化する
売却は、所有権ごと第三者に引き渡し、現金化する選択肢です。
メリットは、管理の負担がゼロになる点、まとまった現金が手に入る点、相続税対策にもつながる点が挙げられます。
一方でデメリットも明確です。
立地や築年数によっては買い手がつかない、希望価格に届かない、引き渡しまで時間がかかる、といったリスクがあります。
向いているケースは、自分や親族が住む予定がない、遠方で管理が継続困難、現金化して別の用途に充てたいパターンです。
関連制度として、相続した空き家を一定の条件下で売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」があります。
適用には複数の条件があるため、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で必ず確認してください。
売却方法は、不動産会社による仲介売却、買取業者への直接売却、自治体の空き家バンクへの登録など、複数の選択肢から選べます。
選択肢② 賃貸|家賃収入を得る
賃貸は、所有権を保ったまま貸し出し、家賃収入を得る選択肢です。
メリットは、継続的な収入が得られる点、資産として保有し続けられる点、立地次第では長期で安定した収益が見込める点になります。
将来的に自分や子世代が住む可能性を残しておきたい読者にも向いています。
ただしデメリットも見過ごせません。
賃貸に出す前には、水回りや内装の初期リフォームに数百万円単位の費用がかかるのが一般的です。
入居者対応や修繕、空室期間のリスクもあります。
加えて、いったん賃貸に出すと「相続空き家3,000万円特別控除」の適用対象から外れるため、税制面の影響を事前に試算しておく必要があります。
向いているケースは、駅近・都市部など賃貸需要が見込める立地、長期保有を前提に資産形成したい、将来の選択肢として残しておきたいパターンです。
賃貸管理会社に運営を委託すれば、オーナー自身の手間は最小化できます。賃貸を前提としたリノベーションの費用相場・補助金・成功事例を別の記事でまとめています。
選択肢③ 解体・更地化|土地として活用
解体は、老朽化した建物を取り壊し、土地として活用する選択肢です。
メリットは、倒壊や火災のリスクを根本から取り除ける点、更地として売却しやすくなる点、駐車場や貸地など別の活用が選べる点になります。
デメリットは、解体費用がまとまった額になることです。
木造の場合で坪単価3〜5万円が目安となり、30坪の戸建てなら100〜150万円程度が必要になります。
アスベストが含まれている場合や、重機が入りにくい立地ではさらに費用が上がります。
最も注意したいのが「再建築不可」のリスクです。
建築基準法では、敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していること、いわゆる接道義務が新築の条件として定められています。
旧法時代に建てられた古い住宅地では、この条件を満たさないまま建っているケースがあり、解体すると二度と建物を建てられない土地になります。
解体する前に、自治体の建築指導課で接道状況を必ず確認してください。
更地にすると住宅用地特例が外れ、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる点も忘れてはいけません。
向いているケースは、接道条件をクリアしている、買主が更地を希望している、駐車場など土地活用の見込みがあるパターンです。
解体のタイミングは、固定資産税の課税基準日である1月1日を意識して、翌年度の税負担を試算したうえで決定するのが鉄則になります。
選択肢④ 建替え|新しい建物を建てる
建替えは、既存の建物を解体したうえで、同じ土地に新築を建てる選択肢です。
メリットは、資産価値が大きく向上する点、間取りや設備を自由に設計できる点、最新の耐震・断熱性能を取り入れられる点が挙げられます。
長期居住を前提にする場合や、土地そのものに資産価値がある場合に有力な選択肢になります。
デメリットは、コストの大きさです。
木造の戸建てでは坪単価60〜100万円が一般的な目安となり、30坪なら2,000〜4,000万円規模の予算が必要になります。
加えて、建築期間中の仮住まいの家賃や引越し費用も発生します。
見落とされがちなリスクが「セットバック」です。
幅員4m未満の道路、いわゆる2項道路に接する敷地では、道路の中心線から2m後退した位置まで敷地を提供する義務があります。
その結果、建替え後に有効敷地面積が減り、今より小さい家しか建てられなくなるケースがあります。
古い住宅地では珍しくない話なので、建築会社の現地調査と自治体の道路台帳の確認が必須です。
向いているケースは、長期居住を前提にしている、土地の立地に資産価値がある、ある程度の予算を確保できるパターンになります。
建替え期間中の固定資産税の取り扱いにも注意が必要で、複数の建築会社からプランを取り寄せて比較検討するのが基本です。
選択肢⑤ リノベーション|既存建物を活かす
リノベーションは、既存の建物を活かしながら、間取りや設備を大きく変更する選択肢です。
メリットは、建替えに比べて低コストで済む点、家族の思い出を残せる点、断熱や耐震の性能を後付けで上げられる点になります。
費用相場は工事の規模によって幅があり、500〜2,000万円程度が一般的な目安です。
デメリットは、既存構造の制約を受ける点と、築年数による限界がある点です。
築50年を超える建物では、構造補強の費用がかさみ、結果として建替えと変わらない金額になるケースもあります。
向いているケースは、建物の構造が比較的健全、思い出のある家を残したい、自分や子世代が住む予定があるパターンです。
国の補助制度としては、2026年度から「住宅省エネ2026キャンペーン 」が始まっています。
この制度は国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携したものです。
「みらいエコ住宅2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」「給湯省エネ2026事業」「賃貸集合給湯省エネ2026事業」の4つの事業を、ワンストップで申請できます。
なお、2025年度まで独立していた「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、2026年度から「みらいエコ住宅2026事業」に統合されました。
ただし長期優良住宅の認定を取得すれば、減税やローン面のメリットは引き続き受けられます。
具体的には、所得税のリフォーム促進税制で最大80万円程度の控除、固定資産税の2/3減額、フラット35Sの金利優遇などです。
補助金が統合されても、認定取得のメリットは引き続き残っているので、検討する価値があります。
5つの選択肢を比較|費用×期間×向いている人の早見表
5つの選択肢は、費用感も期間も向いている読者像も大きく異なります。
ここまでの内容を、横並びで整理します。
選択肢 | 費用相場 | 期間目安 | 向いている人 | 注意点・関連制度 |
|---|---|---|---|---|
売却 | 仲介手数料のみ | 3〜6ヶ月 | 住む予定なし/遠方で管理困難 | 相続空き家3,000万円特別控除 |
賃貸 | 初期リフォーム数百万円 | 2〜4ヶ月 | 賃貸需要のある立地/長期保有 | 3,000万円控除の対象外に |
解体 | 100〜200万円 | 1〜2ヶ月 | 接道条件OK/更地活用見込みあり | 再建築不可リスク/固定資産税6倍 |
建替え | 2,000〜4,000万円 | 12〜18ヶ月 | 長期居住前提/予算に余裕 | セットバックで敷地縮小の可能性 |
リノベ | 1,000〜3,500万円 | 3〜6ヶ月 | 構造健全/思い出を残したい | 住宅省エネ2026キャンペーン |
税制面では、売却に「相続空き家3,000万円特別控除」、リノベには住宅省エネ2026キャンペーンの活用が選択肢になります。
自分のケースを当てはめて比較することで、無理のない選択肢が見えてきます。
後悔しない活用判断|1,000人データから導く5つのチェックポイント
比較検討経験ゼロが79.2%の調査結果を踏まえ、最低限おさえておきたい判断のチェックポイントを5つに整理しました。
築年数、家族との対話、費用負担、特定空家リスク、第三者意見の5つです。
どれか一つでも見落とすと、後から「もっと別の選択肢があったのでは」と後悔するリスクが残ります。
それぞれのポイントを、データを交えながら順に解説していきます。
①築年数で見る「残せる/残せない」のライン
築年数は、活用方針を決めるうえでの最も基本的な判断軸になります。
調査では、築年数別に「老朽化が不安」と答えた人の割合が大きく変化しました。

築20年以下では15.6%、21〜30年で40.6%、31〜40年で47.5%、41〜50年で65.1%、50年以上では77.2%でした。
築40年が、不安が一気に顕在化する分岐点になっています。
判断の目安として、築40年未満であれば、構造の健全性次第でリノベーションの選択肢が現実的に検討できます。
築50年を超える場合は、リノベか建替えかを慎重に比較し、構造調査を含めたプロの診断を受けることが必須です。
築60年以上で老朽化が深刻な場合は、建替えや解体・売却の方向で検討するのが合理的になります。
築年数だけで決めず、構造躯体の状態、シロアリ・雨漏りの有無、基礎の劣化具合を専門家に確認してもらうことで、より正確な判断ができます。
②家族と話す前に決めておくべき3つのこと
調査では52.2%が家族とほぼ話せていない実態が明らかになりました。
話し合いがうまく進まない最大の理由は、議題が漠然としすぎていて、相手が答えようがない状態にあるためです。
切り出す前に、自分のなかで3つのことを決めておくと、対話がぐっと進みやすくなります。
1つ目は「いつまで」のスケジュール感です。
「親が80歳になるまでに方針を決めたい」「相続発生から3年以内に動きたい」など、時間軸を具体化します。
2つ目は「いくらまで」の予算感です。
維持費、税金、活用にかかる初期費用は自分が出せる上限を仮置きしておきます。
3つ目は「誰が」動くかの役割分担です。
調査・交渉・現地対応など、誰がどこを担当するかを最初に決めておくと、責任の押し付け合いを避けられます。
この3点を整理してから家族に切り出せば、「具体的な相談」として受け取ってもらいやすくなります。
③費用負担の見える化|誰がいくら払うのか
維持費の負担者別に強いストレスを感じる割合を見ると、明確な傾向が出ました。

親が負担している場合は35.8%、自分が負担している場合は55.1%、兄弟が負担している場合は59.0%、分担している場合は62.3%でした。
費用負担に当事者として関わるほど、ストレスは鋭くなっています。
特に「分担」のケースが最も高いのは、誰がいくら出しているかが曖昧で、不公平感が積もりやすいためです。
対策は、最初に「現状の負担」と「今後の負担見込み」を一覧化し、家族で共有することから始めます。
固定資産税、火災保険、修繕費、通水・電気の基本料金、近隣への謝礼など、すべての項目をリスト化します。
そのうえで、「収入比率で割る」「均等割」「実家近くに住む人が多めに負担し、遠方の兄弟は別の役割で貢献する」など、ルールを明文化しましょう。
数字が見えれば、感情的な対立は減ります。
④「特定空家リスク」をセルフチェック
特定空家制度を「全く知らない」と答えた人が59.0%にのぼる現状を踏まえ、所有する空き家の状況をその場で確認できるチェックリストを用意しました。
【セルフチェック項目】
▼ 物件の状態(特定空家の予兆)
□ 1年以上、人が住んでいない
□ 庭木や雑草が繁茂している
□ 外壁や屋根に明らかな破損がある
□ 害獣・害虫の発生源になっている
□ 近隣から苦情が出ている
【判定の目安】
▶ 0〜1個:現時点では低リスク。状況は変わるため定期的に再チェックを。
▶ 2個:中リスク。早めの管理改善や活用検討を始める段階です。
▶ 3個以上:高リスク。行政から「特定空家」または「管理不全空家」に指定される可能性があります。
ただし、すでに行政から通知や指導が届いている場合、上記のチェック数にかかわらず、行政の判断プロセスが始まっている可能性が高いです。
放置すると勧告→命令→行政代執行へと進み、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるほか、強制解体に至るケースもあります。速やかに自治体の担当窓口に相談してください。
国土交通省が所管する空家等対策の推進に関する特別措置法は、令和5年に改正され、規制が強化されました。
あわせて2024年4月から相続登記の申請が義務化(法務省)されており、相続を知った日から3年以内の登記申請を怠ると過料の対象になります。
該当しそうだと感じた段階で、自治体の空き家相談窓口や民間の専門家に早めに相談することが、税負担と精神的負担の両方を軽くする最善策になります。
⑤プロの第三者意見の活用|一社だけで判断しない
調査では「業者比較したい」が20.5%、「相場を知りたい」が29.1%と、複数の専門家の意見を求める声が目立ちました。
自由記述の「いい人にあたりづらい、いい人を見つけづらい」の声は、業界共通の課題を浮き彫りにしています。
判断を誤らないためには、立場の異なるプロに意見を聞くことが欠かせません。
売却業者は売却を勧め、解体業者は解体を勧め、リノベ会社はリノベを勧めるのが自然な構造だからです。
それぞれのバイアスを理解したうえで、最低でも3社以上、できれば異なる業種にまたがって話を聞きます。
そのうえで意識したいのが「総額比較」という視点です。
工事費や解体費だけでなく、固定資産税の今後の負担、維持費、売却した場合の手残り、税金の特例適用の有無まで含めた総額で比較します。
複数の業種を横断的に比較できる窓口を最初に活用すれば、各業者のバイアスを相殺しつつ、自分のケースに合った最適解にたどり着きやすくなります。
空き家活用の相談先|状況別の使い分け
空き家の相談先は、目的によって最適な窓口が変わります。
最初から1社に絞り込むのではなく、状況に応じて使い分けるのが最短ルートです。
ここからは、目的別の相談先を整理したうえで、まず全体像を把握したい読者向けの窓口についても具体的に紹介します。
売却・賃貸・解体・建替え・リノベ|目的別の相談先
目的が明確に決まっている場合、それぞれに適した専門窓口があります。
売却を検討するなら、不動産仲介会社や買取業者が一次窓口です。
複数社に査定を依頼することで、相場感がつかめます。
賃貸を検討するなら、賃貸管理会社やサブリース会社が適しています。
地域の賃貸需要や想定家賃の試算、初期リフォームの提案までワンストップで相談できます。
解体を検討するなら、解体業者と自治体の補助金窓口を併用します。
自治体によっては老朽危険空き家の解体補助金が用意されており、相場の半額以下で進められるケースもあります。
建替えを検討するなら、建築会社やハウスメーカーが基本の相談先です。
土地の建ぺい率・容積率や建築基準法上の制約も含めて検討してくれます。
リノベを検討するなら、リノベーション専門会社や、複数のリノベ会社を比較できるポータルサイトの活用が効率的です。
まず全体像を整理したい人は「比較できる窓口」へ
調査で判明した79.2%が選択肢を比較していない事実は、多くの読者にとって「最初に必要なのは比較」という現実を示しています。
1社にだけ相談すると、その業種の答えしか返ってきません。
不動産会社に行けば「売りましょう」、建築会社に行けば「建替えましょう」、解体業者に行けば「解体しましょう」となるのが構造的な宿命です。
最初の一歩としては、複数の選択肢を中立的に比較できる窓口を活用するのが賢明な進め方になります。
フルリノは、リノベーションを検討する読者と全国の施工会社をつなぐポータルサイトです。
費用相場や事例を豊富に掲載し、リノベーションの専門記事やノウハウもまとめて提供しています。
ただし、フルリノが大切にしているのは「リノベを選ばせること」ではなく、「売却・解体・建替えなど他の選択肢も含めて検討したうえで、納得して進められること」です。
リノベに限らず、まず空き家活用の全体像を整理したい段階から、気軽に活用してください。
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まとめ|空き家問題は「比較すれば動ける」問題
1,000人調査から見えた空き家問題の本質は、3つの構造的ギャップに集約されます。
理想と現実のギャップ、危機感と知識のギャップ、当事者と家族のギャップです。
そして「動けない」の本質は、怠惰でも能力不足でもなく、「比較できる情報がない」ことに尽きます。
売却・賃貸・解体・建替え・リノベの5つを並列で検討し、家族との対話と複数業種への相談から始めることで、空き家問題は「動ける問題」に変わります。
フルリノは、リノベだけでなく複数の選択肢を中立的に比較できるスタンスで、読者の判断材料を提供し続けます。
【無料】空き家・実家の活用について相談する
フルリノでは、全国のリノベーション事例を写真付きで公開しており、空き家のビフォー・アフターも数多く掲載しています。
地域や予算、間取り変更の度合いから事例を絞り込めるため、自分のケースに近い実例を見つけやすい構成です。
リノベ会社の検索機能や、無料相談・資料請求の窓口も用意しています。
関連記事として「リノベvs建て替えの徹底比較」「空き家リノベの費用相場」「補助金一覧」も公開していますので、あわせて参考にしてください。
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本調査の概要・引用について
本記事で紹介したデータの調査概要を改めて記載します。
調査名は「実家や空き家の扱いに悩む方の『本音』調査」、対象は実家・空き家を保有または相続する20代から60代以上の男女1,000名、調査時期は2026年4月、実施は株式会社フルリノ、方法はインターネット調査です。
データを引用する際は、「株式会社フルリノ調べ/2026年4月実施・n=1,000」と明記してください。
報道機関、自治体、研究機関による引用を歓迎しています。
なお、本調査はクラウドソーシング経由の自記式インターネット調査である性質上、深刻度が高い層や高齢層が相対的に少ない可能性があります。
引用や解釈の際には、この前提も合わせてご確認いただけると幸いです。
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