「バイオフィリック」という言葉を住宅雑誌やオフィス特集で目にしたことはありませんか?
なんとなく「自然を取り入れたデザインらしい」とは分かっても、結局どんな意味でどんな効果があり、自分の暮らしにどう取り入れればいいのかピンとこない方も多いはずです。
バイオフィリックは、「人間には本能的に自然や生命とつながりたい欲求がある」という考えに基づく言葉で、近年は住宅やオフィスの空間デザインに広く採用されています。
本記事では言葉の由来や基本要素から、ストレス軽減や集中力向上などの具体的効果、住宅・オフィスそれぞれの実例、導入時の注意点までを一気通貫で解説します。
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バイオフィリックとは?言葉の意味と由来を解説

バイオフィリック(biophilic)とは、「生命・自然」を意味する「バイオ(bio)」と、「愛好」を意味する「フィリア(philia)」を組み合わせた造語です。
言葉の背景には、ハーバード大学の生物学者エドワード・O・ウィルソンが1984年に提唱した「バイオフィリア(biophilia)仮説」が存在します。
この仮説は、「人間は、進化の過程で、自然や生命とつながりたい本能的な欲求を持つ」というものです。
長らく仮説とされてきましたが、近年の心理学や建築学、脳科学の研究により、自然環境が人間の心身に与える好影響が科学的に証明されつつあり、この概念が再評価されています。
建築分野では、思想を設計に落とし込んだ空間デザイン手法として広く認知されています。
バイオフィリック / バイオフィリックデザインの違い
「バイオフィリック」と「バイオフィリックデザイン」は、厳密には意味が異なります。
「バイオフィリック(biophilic)」は形容詞であり、自然を好む人間の性質や概念そのものを指します。
一方で「バイオフィリックデザイン(Biophilic Design)」は、概念を建築やインテリア、都市計画などの空間設計に具体的に応用する手法を指す名詞です。
実務上やメディアでは、両者を包括して単に「バイオフィリック」と呼称する場合があります。
本記事では、概念としてのバイオフィリックと、具現化するデザイン手法の両方の側面から解説します。
なぜ今バイオフィリックが注目されているのか
バイオフィリックが現代で注目を集める背景には、複数の社会的要因が挙げられます。
1つ目は、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、在宅時間が増加したことで、人々が住環境の快適性や心身の健康を重視する「ウェルビーイング」志向を強めたことが大きな要因です。
2つ目に、企業経営の観点では、ESG投資やSDGsへの関心が高まっています。
従業員の働く環境を改善し、心身の健康を促進するバイオフィリックなオフィスは、生産性向上だけでなく、企業の社会的価値を高める要素として認識されています。
このような流れを受け、国内でも先進的なオフィスビルや住宅、商業施設での導入事例が急速に増加しています。
部屋のテイスト決めでお悩みの方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
https://furureno.jp/magazine/room-interior-taste-decision
バイオフィリックデザインを作る4つの要素

バイオフィリックデザインは、単に植物を置くことだけを指すのではありません。
人間の五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚)に働きかけ、総合的に自然とのつながりを感じさせる空間を構築することが本質です。
具体的には、「自然光」「植物」「自然素材」「自然の感覚」の4つの要素をバランス良く取り入れることが重要とされています。
4つの要素を組み合わせることで、より効果的に心身への好影響が期待できます。
それぞれの要素を住宅やオフィスに導入する具体的な方法を解説します。
自然光をたくさん取り入れる
自然光は、人間の体内時計を正常に保ち、精神的な安定をつくる重要な要素です。
リノベーションでは、大開口の掃き出し窓や天窓(トップライト)、吹き抜けを設けることで、室内の奥まで光が届くように計画します。
既存の建物で大きな窓の設置が難しい場合でも、間仕切り壁をガラスにしたり、光を反射しやすい白を基調とした内装にしたりして採光効率を高めることが可能です。
照明計画も大切で、時間帯によって色温度が変化する太陽光に近い照明(自然光LED)を導入すると、一日を通して自然な光環境を再現できます。
カーテンは光を遮断しすぎないレースやリネンなど、透過性の高い素材を選ぶと良いでしょう。
観葉植物と「緑視率」を高める
空間へ植物を導入するのも、バイオフィリックデザインの代表的な手法です。
特に大事なのが「緑視率」、つまり視界に入る緑の割合です。
研究によれば、緑視率が10〜15%の環境だと、人は心理的なストレスが軽減されると報告されています。
この割合にするためには、床置きの大型観葉植物だけでなく、壁面緑化や天井から吊るすハンギングプランターなどを活用し、立体的に緑を配置するのが効果的です。
植物の管理が心配な方は、サンスベリアやポトス、モンステラなどの比較的丈夫で手入れが容易な品種から始めるのがおすすめです。
自然素材(無垢材・天然石・タイル)を使う
視覚だけでなく、触覚を通じて自然を感じることもポイントです。
床材に無垢フローリング、壁材に漆喰や珪藻土など自然素材を用いることで、温かみのある手触りや足触り、調湿効果などが得られます。
自然素材は、集成材やビニールクロスにはない、不均一な木目や塗り跡を持ち、空間に深みを与えます。
アクセントとして、壁面や床に天然石や、質感を再現した石目調のタイル(バイオフィリックタイル)を取り入れるのも効果的です。
色彩計画は、土や木、石、苔などを連想させるアースカラーで全体を統一すると、より一層自然との一体感が生まれます。
リノベーションの素材選びについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
https://furureno.jp/magazine/material-selection-renovationrenovation-mat
自然音・香り・水の動きを取り入れる
バイオフィリックデザインは、視覚や触覚以外の五感にもアプローチします。
聴覚的には、川のせせらぎ、鳥のさえずり、風の音などの自然環境音をBGMとして流すことで、心理的なリラックス効果が期待できます。
近年では高品質な自然音を提供するアプリやスマートスピーカーも活用できます。
嗅覚には、ヒノキやシダーウッド、ユーカリなどの森林を思わせるアロマオイルやディフューザーが有効です。水の動きは生命感や清涼感をもたらします。
室内に小型のテーブルファウンテンやアクアリウムを設置すると、水の揺らぎや音を日常的に感じることができ、空間に穏やかな変化と潤いを与えてくれます。
バイオフィリックを取り入れるメリットは?

バイオフィリックデザインの導入で得られる効果は、単に「心地よい」という主観的な感覚だけではありません。
国内外の多くの研究によって、心身の健康や知的生産性に対する具体的なメリットが報告されています。
ストレス軽減、集中力向上、幸福度の向上、健康促進、さらには人間関係の円滑化など多岐にわたる観点から検証されています。
ここでは、科学的根拠に基づいた5つのメリットを詳しく解説します。
ストレス軽減・リラックス効果が期待されている
自然要素のある空間は、日々のストレスを和らげ、心穏やかにリラックスできる空間づくりに役立つと考えられています。
自宅で仕事をする在宅ワーカーにとっては、仕事の緊張感とプライベートの緩和を両立させる必要があり、「家でも気が休まらない」という課題を解決できます。
集中力・生産性・創造性の向上に繋がるとされている
オフィス環境へのバイオフィリックデザインの導入は、従業員の創造的な発想を促す可能性があるといわれています。
自然要素は注意散漫な状態から意識を回復させる「注意回復理論」に基づき、集中力の維持・向上に影響するとされています。
創造性に関しても、固定観念にとらわれない柔軟な発想を促す効果が報告されており、知的生産性を高めるための空間設計として注目されています。
在宅ワーク環境のリノベーションのコツについては、こちらで解説しています。
https://furureno.jp/magazine/workspace-renovation
心も体も健康的になり幸福度を高める傾向がある
人間が本能的に持つ自然とのつながりを満たすことは、主観的な幸福度(ウェルビーイング)向上への影響が期待されています。
日常的に緑や自然光、天然素材に触れる環境は、安心感や満足感をもたらし、精神的な安定につながります。
特に、都市部での生活や在宅時間の長期化により、自然から切り離されがちな現代人にとって、住まいにバイオフィリックな要素を取り入れる効果は大きいです。
個人のメンタルヘルスだけでなく、共に暮らす家族間のコミュニケーションを円滑にし、家庭全体の幸福感を高めるポジティブな影響も期待できます。
健康促進・睡眠の質向上が期待できる
バイオフィリックデザインは、身体的な健康にも好影響を及ぼします。
例えば、朝の自然光を浴びることは、体内時計をリセットし、自然な生活リズムを整えてくれます。
また、観葉植物には蒸散作用があり、室内の湿度を適切に保つ効果が期待できます。
特に乾燥しがちな冬場の空気環境を改善し、過ごしやすい環境にしてくれます。
住宅にバイオフィリックを取り入れるアイデア4選

ここからは、実際に住宅へバイオフィリックデザインを取り入れるための具体的なアイデアを、空間別にご紹介します。
大規模なリノベーションで実現できる本格的なものから、賃貸住宅でも実践可能な手軽な工夫まで、予算や住まいの状況に合わせて選択できる方法をまとめました。
リビングや寝室、ワークスペースなど、それぞれの部屋の機能に合わせた取り入れ方のポイントを解説します。理想の住まいづくりの参考にしてください。
【リビング】観葉植物と自然素材で「家の中の森」をつくる
家族が集うリビングは、バイオフィリックデザインの中心になる空間です。
まず、部屋のシンボルとなるフィカスやモンステラ、エバーフレッシュなどの大型の観葉植物を1〜2点配置すると、空間の印象が大きく変わります。
床材には足触りの良い無垢フローリングを選び、壁には漆喰や珪藻土、アクセントウォールとしてウッドパネルを用いると、素材感が際立ちます。
家具も木製のものを中心に選び、カーテンやソファカバーにはリネンやコットンなどの天然繊維を取り入れることで、全体の統一感が生まれます。
大きな窓から入る自然光と、夜は温かみのある間接照明を組み合わせ、時間と共に表情を変える「家の中の森」のような空間を目指します。
部屋のテイストの種類については、こちらの記事で紹介しています。
https://furureno.jp/magazine/room-taste-interior-styles
【寝室】木質感と自然光のリズムで睡眠の質を上げる
一日の疲れを癒やす寝室では、リラックス効果と睡眠の質を向上させるデザインが求められます。
視界に入る情報の大部分を占める壁や天井に、杉やヒノキなどの無垢材パネルを施工すると、木の香りと温もりに包まれた空間になります。
体内時計を整えるためには、東側の窓がポイントです。
遮光等級を調整したカーテンを選び、朝の光を穏やかに室内に取り込めるように計画しましょう。
また、バイオフィリックデザインは和モダンとの親和性が高いです。
間接照明と組み合わせた障子や、ヘッドボードに竹材を用いるなど、和の要素を取り入れることで、静かで落ち着きのある寝室空間を演出できます。
和モダンな寝室の作り方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://furureno.jp/magazine/japanese-modern-bedroom
【壁】バイオフィリックタイル・壁紙を取り入れる
壁や床は面積が大きいため、素材を変えることで空間の印象を大きく左右します。
例えば、天然石の風合いを再現した磁器質タイルを床や壁のアクセントに用いると、空間に重厚感と自然の力強さが加わります。
また、植物の葉や花、木目をモチーフにしたボタニカル柄の壁紙も効果的です。
全面に使うと圧迫感が出る場合は、トイレや洗面所、書斎の一面だけなど小規模な空間で採用すると、手軽にデザインのポイントを作ることができます。
近年では、賃貸住宅でも使用可能な、貼って剥がせるタイプの壁紙やフロアタイルも豊富にあり、導入しやすくなっています。
【在宅ワーカー向け】ワークスペースをバイオフィリック化する
在宅ワークの生産性を高めるため、ワークスペースへのバイオフィリック導入はおすすめです。
まず、デスクの配置を工夫し、窓の外の景色が見える、または自然光が手元を照らす位置に設定します。
視界に緑を入れるため、デスクの横や棚に小型の観葉植物を配置し、緑視率10%以上を目指します。
長時間触れることになるデスクの天板には、無垢材や集成材を選ぶと、手触りから木の温もりを感じられます。
また、コルク製のデスクマットや木製のペンスタンド、革製のマウスパッドなど、小物に自然素材を取り入れるだけでも、無機質になりがちなデスク周りの環境を改善できます。
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オフィス・店舗で導入した事例を紹介!
バイオフィリックデザインは、住宅だけでなく、オフィスや店舗、公共施設など、さまざまな商業空間で価値を発揮しています。
企業にとって、従業員の生産性向上やエンゲージメント強化や、店舗にとって顧客満足度の向上や滞在時間の延長は、経営上のメリットに直結します。
ここでは、国内外の先進的な導入事例を挙げながら、目的や効果、そして導入後の維持管理など現実的な側面も解説します。
国内オフィスの導入事例
国内でも、先進的な企業を中心にオフィスのバイオフィリック化が進んでいます。
例えば、大和ハウス工業の研修施設「大和ハウスグループみらい価値共創センター(コトクリエ)」内には、緑豊かな空間で創造性を刺激する「Biophilic STUDIO」が設けられています。

また、株式会社エム・シー・ファシリティーズのオフィスでは、執務エリア内に多くの植物を配置し、従業員のコミュニケーションとウェルビーイングを促進しています。

近年では、構造材に木材を積極的に使用した木造オフィスとバイオフィリックデザインを組み合わせ、サステナビリティと快適性を両立させる事例も増えています。
店舗・商業施設・ホテルでの活用
不特定多数の人が利用する店舗や商業施設では、バイオフィリックデザインが空間の魅力を高め、集客力を向上させる要素となります。
カフェやレストランでは、豊富な緑がリラックスした雰囲気を作り出し、顧客の滞在時間を延ばす効果が報告されています。
ホテルのロビーやラウンジでは、大型の植栽や水の流れる壁などが非日常的な空間を演出し、施設のブランドイメージ向上にも貢献します。
また、医療施設やクリニックでは、植物や自然光が患者の不安を和らげ、回復を促進する効果も期待されています。
海外では、シンガポールの「パークロイヤル・コレクション・ピッカリング」のように、建築自体が緑に覆われたホテルも登場しており、観光名所となっています。
店舗リノベーションのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
https://furureno.jp/magazine/renovation-shop
バイオフィリック導入の注意点と失敗しないためのポイント

バイオフィリックデザインには多くのメリットがありますが、導入と維持にはいくつかの注意点が存在します。
特に植物を多用する場合、水やりや剪定、病害虫対策など定期的なメンテナンスが必要です。
維持管理の体制を事前に計画しておかなければ、植物が枯れてしまい逆効果になりかねません。
失敗しないためのポイントは、まず「完璧を目指さない」ことです。
光、植物、素材、音など複数の要素を少しずつ、バランス良く取り入れることがポイントです。
そして重要なのは、予算とメンテナンスにかけられる労力から逆算して、導入の規模や方法を決めることです。
大規模な壁面緑化などは、植栽の専門業者や信頼できる施工会社などのプロフェッショナルに相談するのが成功の鍵です。
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バイオフィリックは、人間が本能的に持つ自然とのつながりを、建築やインテリアデザインを通じて取り戻すための手法です。
その効果は、ストレスの軽減や集中力の向上、心身の健康促進など多岐にわたります。
この記事で紹介したように、導入方法は大規模なリノベーションから、観葉植物を一鉢置く、自然素材の小物を取り入れるなどの手軽なものまで様々です。
まずは小さな一歩から、暮らしに自然を取り入れてみてはいかがでしょうか。
本格的なリノベーションや、住まい全体の空間設計をご検討の際は、ぜひお気軽にフルリノへご相談ください。
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